[リレーコラム] VOL.046
私が大切にしている事
特別養護老人ホームゆるり 主任
平沼 香織(ひらぬま かおり)
桜の咲く時期に思い出す事。
祖父が入院中、絶対安静の時期に急にみんなに会って挨拶に行くと言いだした。
家族は困惑したが、1人の看護師が「一緒に行こう」と協力してくれた。
歩ける状態ではなかったが、1人1人に会い車の中から挨拶をして回った。
帰り途中に大きな桜の木があり、お花見がしたいと言い桜の木の下でワンカップを飲んだ。
その3日後に祖父は亡くなった。
あの時、誰かが反対していたら祖父の思いは叶えられなかった出来事。
それぞれの気持ちや専門的な意見は大切だけれど、まず本人の気持ちを第一に考えられたらと思う。
桜の木の下に座って、大好きなお酒を嬉しそうに呑んで微笑む祖父の姿が思い浮かぶ。
専門学校の卒業式、校長先生のはなむけの言葉
「皆さん、歌って踊れる介護士になって下さい!」
あの頃は、面白い校長だなとしか思わず、何を意味しているのか理解できなかったが今なら分かる気がする。
相手に寄り添い、楽しい時は笑い、遊びたい時には遊ぶ、一緒に踊り、一緒に歌う。
悲しい時には一緒に泣く。介護技術は慣れれば誰にでも出来る事。
介護士としてやることは介助技術を磨く事だけじゃない。
やりたい事は一緒に叶え、一番の味方でいる事。出来ないと決めつけない事。
施設に入った時点で諦めている方も多い。自分の気持ちを伝えられない方も居る。
引き出す事も私たちの役割。寄り添って何がしたいのか考える。
いくつになっても、夢や目標があっていい。あの頃は良かったではなく、今も楽しく生きて欲しい。人生の最期までその人らしく生きられるよう私に出来る事をやっていきたい。
ある日、相談に来てくれたTさん
「四国の妹に会いに行きたいけど、1人では行けないから悩んだの。で、思いついたの!私にはあなたが居るじゃない!一緒に行ってくれる?」
あの時の晴れ晴れしい笑顔は今でも私の最高の宝物。
さて、明日はだれと何をしようかな。